マイナー組織適合抗原(以下、マイナー抗原)に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)のうち、白血病細胞を含む血液系細胞のみを傷害するものは免疫療法に有用である。本研究期間中に4種類の新規マイナー抗原を同定した。 (1)ヒトCathepsin H(CTSH)の多型アミノ酸部位にコードされるHLA-A*3101およびA*3303分子に拘束される2つのマイナー抗原を同定した。造血器悪性腫瘍の養子免疫療法の標的となりうることを確認するため、共焦点レーザー顕微鏡にてCTSHの発現を検討した。本蛋白質は単球系の白血病で高発現しており、良い標的となると考えられた。 (2)HLA-B44拘束性のCTLクローンが認識するマイナー抗原遺伝子が連鎖解析法により染色体の18q23に存在することを明らかにした。さらに発現クローニング法により、SERPINB8近傍の遺伝子(HMSD)のイントロン2のSNPに起因するスプライスバリアントによってコードされるポリペプチド上に新規マイナー抗原を同定した。この遺伝子は骨髄性白血病で発現が強いため、移植片対白血病効果の増強に有用な可能性がある。 (3)造血器腫瘍に対する免疫療法に有用な標的としてライデン大学のグループが報告したHA-1マイナー抗原が既報のHLA-A*0201、B60以外のHLAで提示されないか検討したところ、日本人に多いHLA-A*0206ないしはB61によっても提示されうる可能性を見いだした。さらに他のHLA分子によって提示されないか、検討している。 (4)同種造血細胞移植後再発白血病に対すして、本研究者らが同定したHLA-A24・B44拘束性、BCL2A1遺伝子由来のマイナー抗原2種およびHA-1マイナー抗原ペプチドを標的としたマイナー抗原特異的ワクチン療法の開始した。
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