研究概要 |
トリステトラプロリン(TTP)はTNFαのmRNAを不安定化させその産生を低下させる細胞内蛋白である。TTPの関節リウマチ(RA)の病態における役割を解析することを目的とした。 1.TTP遺伝子を組み込み、ヒトT細胞株に導入したところ、非刺激状態おけるTNFα mRNA量は減少し、PHA刺激による増加も減少、TNFα蛋白の産生も抑制された。 2.RA患者と変形性関節症患者関節滑膜におけるTTP、TIA-1およびHuR遺伝子の発現を検討したが、これらとTNFα遺伝子発現・血中CRPとの間に有意な関連はみられなかった。しかしTIA-1とHuR遺伝子発現との間には強い正の相関がみられた。 3.インフリキシマブ(IF)投与開始前後の末梢血単核球におけるTNFα、TTP、TIA-1、HuR遺伝子発現を測定した。RA患者においては健常人に比し、TTPとHuR遺伝子発現、TTP/TNFα,TTP/HuR、TIA-1/TNFα遺伝子発現比が低く、逆にTNFα、TIA-1、TIA-1/HuRは高かった。TTP/HuRは投与開始後有意に低下した。健常人でみられたTIA-1とTNFα,TNFαとHuR、TTPとTIA-1の有意な相関は治療開始前のRA患者ではみられなかったが、開始後はTIA-1とTNFα、TNFαとHuR間に有意な相関がみられた。投与開始前TIA-1/HuR比は同剤有効例で高い傾向にあった。 4.TTP遺伝子プロモーター領域の1塩基多型SNP359(G/A)の解析を行った。患者群内では遺伝子型GGを持つ患者がより発症年齢が低い傾向にあり、さらにIFを導入されている比率が高かった。現在プロモーター活性の差を解析中である。 5.TTP遺伝子を導入した過剰発現マウスを作成したところ、ヘテロマウスでコラーゲン誘導関節炎重症度が低くなる傾向がみられている。
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