近年自然免疫の研究が進み、病原微生物の分子をパターンとして認識することが解明され、それらの受容体としてToll様受容体(Toll-like receptor ; TLR)ファミリーが同定されてきている。しかしながら、TLR受容体自体の細胞内動態、即ちTLR受容体がどのような機序により細胞表面に発現し、病原微生物の分子を認識後に活性化されて細胞内に取り込まれ、細胞内輸送されるのかという分子機序に関しては、ほとんど解明されていない。LPSをリガンドとするTLR4に焦点を絞り、これらの受容体が各々のリガンドで刺激後にどのような細胞内動態を呈するか、この受容体の細胞内ドメインのアミノ酸配列中に輸送を規定する重要な細胞内モチーフは何かということを検証した。 LL(ロイシン・ロイシン)というモチーフに着目して、TLR4受容体の種々のトランケーション変異体を作成した。これらをMD2とともにHEK293T細胞に発現させ、NF-κBを指標としてLPS刺激による活性化を検討したところ、1-826変異体では活性化が認められたが、1-815変異体では活性化は認められなかった。さらに1-826変異体では野生型と同様の細胞内分布を示したが、1-815変異体では細胞表面発現が認められなかった。以上のことから、少なくともこれらの部位にTLR4の細胞内動態を規定するモチーフがあることが示唆されたので、次にこれらの部位の種々の変異体を作成し、解析を行った。その結果、815番のL(ロイシン)をA(アラニン)に置換した変異体TLR4(L815A)は、細胞表面発現が認められず、CD14の非存在下では、LPSによる活性化が認められなかった。ただし、CD14の存在下では、LPSによる活性化が認められた。以上の研究により、TLR4の細胞内分布に影響を与える変異部位を同定した。
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