研究課題
基盤研究(C)
生体内外の環境の酸素濃度には大きなグラジエントが存在する。リンパ球などの免疫細胞は、生体内を広く移動し、極端な酸素環境の変動に曝される。かかる細胞にとって、環境酸素濃度の変化に適応することは、細胞機能を維持するうえで重要である。低酸素により活性化される転写因子Hypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)は、細胞の低酸素適応に重要な多くの遺伝子の発現を転写レベルで制御する。申請者らは、低酸素下のT細胞においてHIF-1αがT細胞受容体などを介した細胞活性化刺激依存性に発現し、炎症巣局所でのT細胞の寿命の制御に関わっていることを明らかにした。すなわち、HIF-1αによる細胞内シグナルが、活性型リンパ球の細胞機能、局所の免疫応答の制御に重要な役割を果している可能性を示した。本研究は、リンパ球におけるHIF-1α発現制御の分子機構を明確にすると共に、リンパ球機能制御、免疫応答制御におけるHIF-1αおよび低酸素シグナルの役割を明らかにし、低酸素シグナル伝達システムを標的とする新たな免疫制御法開発をめざすものである。18年度研究計画に沿って以下の様に研究が展開された。リンパ球におけるHIF-1αシステムの人為的調節と疾患治療の試み-疾患モデル動物の解析(1)各種炎症疾患モデルマウスにおけるHIF-1α発現の修飾:抗HIF-1分子IPASトランスジェニックマウスにおいて、炎症、血管新生モデルとして創傷治癒モデルを作成し、HIF-1機能抑制により創傷治癒が遅延することを見い出した。(2)HIF-1α siRNA発現マウスにおける疾患モデルの作成とその解析:マウス培養細胞でHIF-1α発現をSiRNAにより抑制するシステムを樹立した。(3)HIF-1αSiRNA発現アデノウイルスを作成した。関節内感染の予備検討が終了した。
すべて 2007
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J. Biol. Chem 282
ページ: 14073-14082
J.Biol.Chem. 282