研究課題
基盤研究(C)
自己免疫疾患の発症は、遺伝的背景に多彩な外的要因が組み合わされて、トレランスが破綻することによって起こる。ループス腎炎の発症機序は不明であるが、何らかの誘因が末梢トレランスを破綻させ、自己反応性Tリンパ球の生存と活性化をもたらし、自己免疫応答を誘発する。最近CD28・B7ファミリー分子がT細胞の活性化とその活性化後の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。なかでもPD-1は、抑制性シグナルをリンパ球に伝達する分子としてトレランスの維持にきわめて重要であると考えられる。PD-L1は非血液細胞に広汎に分布しており、末梢トレランスに深く関わっていることが推察される。そこで、我々は、PD-1/PD-Lの異常がループス腎炎で存在するか、PD-1/PD-Lシステムを修飾するとループス様腎炎が起こるか、を解明することを目的として、マウス・ループス様腎炎モデルで解析した。我々は、ループス様腎炎のモデルであるNZB/W F1マウスにおけるPD-1/PD-L1の発現を確認した。PD-1は腎浸潤リンパ球上に発現し、PD-L1は浸潤リンパ球・糸球体細胞・尿細管細胞に発現していた。これらのことから、PD-1/PD-L1経路がループス様腎炎の発症への関与が推定された。次にNZB/W F1マウスに抗PD-L1抗体を3ヶ月間腹腔内投与した。抗PD-L1抗体投与群は非投与群に比べて早期に尿蛋白が出現し、約半数のマウスが早期に死亡したので、抗PD-L1抗体投与は腎炎を増悪させると結論された。また、抗体投与群で血清中インターフェロンγ(IFNγ)が著増しており、リンパ球を介して病態を修飾している可能性が強く示唆された。以上のようにPD-1/PD-Lシステムは自己免疫疾患の発症と密接に関連しており、今後の研究の進展が自己免疫疾患の治療法の開発につながることを期待している。
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臨床免疫 45巻・5号
ページ: 571-577
J Rheumatol 32巻・11号
ページ: 2156-2163
J Rheumatol 32(11)