本研究では、新規アダプター分子Bam32によるB細胞増殖ならびに抗原取り込み制御機構、さらに自己免疫疾患B細胞におけるBam32の役割について検討した。 (1)Bam32によるB細胞増殖制御機構の解明 Bam32によるB細胞増殖制御にはRac活性化の制御が重要である。Rac上流分子のRac-GEFのひとつVav2に着目し、Vav2はB細胞活性化によるリン酸化に伴いBam32へ会合した。Vav2リン酸化はRac活性化に重要とされているが、Bam32はVav2リン酸化非依存的にRac活性化を制御した。 (2)Bam32による抗原取り込み制御機構の解明 Bam32による抗原取り込み制御はF-アクチン依存性である。その制御分子としてdynamin2に着目し、dynamin2はB細胞活性化にてリン酸化された。Bam32欠損はdynamin2リン酸化には影響しなかったが、共焦点顕微鏡による解析にてBam32とdynamin2は潜性化後に共局在した。また、Bam32欠損によりdynamin2の細胞質から膜分画への移行が障害されていた。よって、Bam32はリン酸化非依存的にdynamin2の機能を制御していることが示唆された。 (3)自己免疫疾患B細胞におけるBam32の役割 自己免疫疾患においてB細胞増殖と抗原提示は重要であり、Bam32がこの2つのB細胞機能を制御することより、全身性自己免疫疾患の代表であるSLEにおけるBam32発現異常について定量的PCRにて検討した。健常人ならびにSLEの末梢血B細胞をnaiveならびにmemory Bのサブセットへ分離しBam32発現を比較したところ、SLEにおいては両サブセットでBam32の発現増強が見られ、この違いはmemory B細胞にて顕著であった。よって、自己免疫疾患におけるB細胞機能異常へのBam32の関与が示唆された。
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