近年抗TNF療法が、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎をはじめ、さまざまな炎症性疾患に効果があることが明らかになってきており、抗TNF抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)と可溶型2型TNF受容体(エタネルセプト)とでは、効果を示す疾患にも違いがあることがわかってきた。すなわち、これら3つの抗TNF製剤は可溶型TNFを同様に中和することから、単なる可溶型TNFの中和という作用以外に異なった作用機序を有することが予想される。膜型TNFは、サイトカインなどのさまざまな刺激に伴って活性化マクロファージやT細胞の表面に表出する可溶型TNFの前駆体である。膜型TNFの新しい免疫機能についてこの2年間は研究を進めてきた。我々は昨年までの研究で、T細胞株のJurkatで高発現した膜型TNFが、IL-2、IFN-γなどのサイトカイン産生、接着分子であるE-セレクチンの誘導、細胞内カルシウム濃度の上昇などの生物活性を示すことを明らかにしてきた。 我々は、樹立した膜型TNF発現Jurkat細胞を用いて、これら3種の抗TNF製剤の膜型TNFに対する作用を検討した。インフリキシマブ、アダリムマブ、エンブレルは、FACSで検討したところ、細胞表面の膜型TNFに同様に結合した。細胞内に直接シグナルを伝達するかを、アポトーシス、細胞周期の変化を指標として解析した。インフリキシマブ、アダリムマブは細胞内に直接シグナルを伝えて、膜型TNF産生細胞をアポトーシスに導くことが明らかになった。 また細胞周期の停止を導くことが明らかになった。一方、エタネルセプトではこのような作用に乏しいことが明らかになった。このように、抗TNF抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)と可溶型2型TNF受容体(エタネルセプト)は膜型TNFを介して異なるシグナルを伝達することが示された。作用機序の違いについての一つの説明になりうると考えられる。
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