研究概要 |
Nontypeable Haemophilus influenzae(NTHi)は中耳炎、気管支炎や肺炎など様々な感染症を人に引き起こす菌であり、一方H.influenzae type b(Hib)は小児の髄膜炎の起炎菌として重要である。近年、NTHiがバイオフィルムを産生することが報告されているが、今回我々はNTHiとHibのバイオフィルム産生能の違いを明らかにする目的で以下の検討を行った。血清型判定によりb型と判定された25株のHib(上気道由来4株、髄液由来21株)、血清型判定およびPCRによる耐性遺伝子検索を行った上で判定された22株のβ-lactamase-negative ampicillin(ABPC)-resistant(BLNAR)NTHi(上気道由来16株・眼脂由来3株、中耳由来3株)、26株のβ-lactamase-negative ABPC-susceptible(BLNAS)NTHi(上気道由来13株、喀痰由来13株)、28株のTEM-1型β-lactamase-producing ABPC-resistant(BLPAR)NTHi(上気道由来16株、喀痰由来12株)を対象としてマイクロプレートを用い、24時間後のbiofilm growth assayを行った。このうちバイオフィルム産生株、非産生株の間で走査型電子顕微鏡を用いて経時的なバイオフィルム産生の画像的変化を比較検討した。Hib,BLNAR-NTHi,BLNAS-NTHi,BLPAR-NTHiのbiofilm growth assayにおけるOD_<600>の平均値はそれぞれ0.09(range:0-0.86),0.50(range:0.13-1.19),0.57(range:0.01-1.48),0.34(0.01-0.96)であった。走査型電子顕微鏡による観察ではBLNAR-NTHi,BLNAS-NTHi,BLPAR-NTHi間のバイオフィルム形成はほぼ同様であったが、Hibでは数株を除いて菌の表面への付着が乏しく、バイオフィルム形成もほとんどみられなかった。バイオフィルム形成がみられたHibの多くは、PCR,sequenceにより莢膜が脱落していることが確認された。その確認のため現在米国アイオワ大学微生物学教室と共同で莢膜を脱落させた作成に取り組んでおり、今後Hibにおける莢膜とバイオフィルム形成の関連について明らかにしていく予定である。
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