研究概要 |
近年人に中耳炎や下気道感染症を引き起こすNontypeable Haemophilus influenza(NTHi)バイオフィルムを産生するという報告がなされるようになった。最近、本邦ではβ-lactamase-negative ampicillin(ABPC)-resistaRt(BLNAR)株の増加に伴い、特に小児の難治性中耳炎症例が増え、臨床上の問題となっている。今回我々はNTHiによるバイオフィルムに対する抗生物質の抑制効果についてBLNAR株と感受性(BLNAS)株の間で比較検討した。バイオフィルム産生能をもつことが確認されたBLNAS株及びBLNAR株を96穴マイクロプレートに接種し、その後経時的に各種抗生物質(ABPC, cefaclor(CCL), erythromycin(EM), clarithromycin(CAM), levonoxacin(LVFX))を添加し、biofilm production assayを行うことにより各種抗生物質のバイオフィルムに対する効果について比較検討した。マイクロプレートでNTHiを4時間培養後ABPc, CCL, CAMそれぞれ1時間加えた場合、BLNAS株ではいずれの薬剤でもコントロールに比較してバイオフィルム産生は低かったが、BLNAR株ではいずれの抗生物質存在下でもコントロールに比較してバイオフィルム産生は高く、かつ低濃度の抗生物質の存在下でバイフィルムの産生が高まる傾向がみられた。NTHiを2日間培養後にABPC, CCL, EM, LVFXを繰り返し加えた場合、ABPCやCCLでは薬剤の濃度を上げてもBLNAS, BLNARともにNTHiが産生するバイオフィルムの抑制効果はみられなかったが、EMやLVFXでは濃度依存性のバイオフィルムの抑制効果が認められた。ペニシリン剤やセフェム剤などにはNTHiが産生するバイオフィルムの抑制効果はみられず、マクロライド剤やキノロン剤には薬剤耐性、感受性に関係なくNTHiが産生するバイオフィルムの抑制効果があることが示唆された。今後、この抑制効果を生かした投与方法を検討することが重要と考えられる。
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