研究課題
重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス(SARS-CoV)および高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1-Flu)は人類にとって最大の脅威である呼吸器感染症である。これらウイルスの病原性を解析するためにはウイルス感染試験が可能な研究施設が必要であり、さらに実験動物を用いた感染試験は安全性の観点からも極めて大きな制限がある。また、これらウイルスの遺伝子操作系は現在、世界でも限られた研究室でしか成功、実施されていないのが現状である。そこで本研究ではこれらのウイルスの病原性を解析し、有効な診断・治療法を開発することを主たる研究目的とする。そのために、SARS-CoVおよびウイルス遺伝子の一部を発現させたニューカッスル病ウイルス(NDV)を基盤とした新しいタイプのシュードウイルスシステムを作製し、SARS-CoVおよびH5N1-Fluの動物感染モデルを開発する計画である。現在、NDV表面構造タンパク質(F・HN)遺伝子を欠損させたウイルス(RNAレプリコン)cDNAを細胞に導入することにより、このRNAレプリコンが持続的に複製・増殖し、非感染性ウイルス粒子(コア粒子)を産生する系を開発している。この系を基盤として、GFP遺伝子を導入したRNAレプリコンを用いて(感染性ウイルスを産生せずに)持続的にRNAレプリコンが複製・発現する細胞株の樹立を試みている。次年度はこうして得られた細胞株にSARS-CoVおよびH5N1-Fluの表面構造タンパク質をtransに組み込み、シュードウイルスの作製を試みる計画である。
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