研究概要 |
【方法】1.慶応義塾大学病院および関連施設の膠原病患者のうち、13,000例を対象とした。2.自己抗体の検索:HeLa全細胞抽出物(非脱蛋白抗原),あるいはフェノール抽出により脱蛋白した(deproteinized;d)核酸成分抽出物を抗原とした免疫沈降法により,患者血清中の自己抗体が認識する核酸成分,蛋白成分を分析した。3.抗SRP抗体陽性36例の臨床的特徴(臨床症状,検査所見,治療反応性,予後など)を,同抗体の免疫沈降反応パターンにより層別化し,解析した。4.抗SRP抗体陽性筋炎例の筋病理組織学的特徴を検討した。 【結果】1.9例(25%)血清が脱蛋白(d)7SL-RNA,13例(36%)血清が72,54,19,9kDa蛋白を免疫沈降するなど,計10種類の免疫沈降パターンがみられた。2.抗SRP抗体陽性全36例の臨床特徴を検討すると,筋力低下,CK高値が高頻度で,皮膚筋炎(DM)皮疹,悪性腫瘍,重複症候群,レイノー現象,間質性肺炎,関節炎は低頻度であった。3.72kDa蛋白,19/9kDa蛋白との反応例は非反応例に比べ筋力低下,CK高値を有意に高頻度に認めた。4.d7SL-RNA,68kDa蛋白を免疫沈降する全症例が筋力低下,CK高値を示したが,DM皮疹,悪性腫瘍は認めなかった。5.54kDa蛋白と反応する症例は非反応例に比べ,関節炎が有意に低頻度であった。6.筋病理所見を詳細に検討できた抗SRP抗体陽性筋炎12例中,全例に壊死または再生像を認めたが,1例を除き炎症細胞浸潤は認めなかった。 【結語】抗SRP抗体は,d7SL-RNAと6種類のポリペプチドに対し免疫学的多様性を示し,その反応性と臨床像との関連性が明らかとなった。SRPを構成するRNAおよび蛋白成分の分子構造と自己抗体の認識様式の検討は,同自己抗体の産生機序,およびPMの病態を追究する上で重要と考えられる。抗SRP抗体陽性筋炎例の筋病理組織像は炎症所見の明らかでない壊死性筋炎が特徴的で,臨床病態との関連機序の解明が今後の課題である。
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