研究概要 |
【目的】昨年までの検討により,シェーグレン症候群患者末梢血においてはインターフェロン誘導遺伝子の高発現が認められ,また悪性リンパ腫を合併した症例においては,ribosomal protein遺伝子の高発現を認めた。そこで,これらの遺伝子発現異常の意義を解析した。【対象と方法】リンパ腫非合併一次性SS14例(全例女性,59.3±13.8歳),MALTリンパ腫合併一次性SS2例(全例女性,69および80歳)の末梢血の遺伝子発現をJapan Genome Solution(JGS)社のDNA microarray(778遺伝子)を用いて解析し,臨床検査値との関連を解析した。またリンパ腫合併例において,末硝血,唾液腺組織,リンパ節におけるribosomal protein S27とS29遺伝子の発現をreal time-PCR法にて測定し,その特異性および病勢との関連について解析した。【結果】1)DNA microarray解析によりシェーグレン症候群患者末梢血において最も高発現していたinterferon-inducible protein 27(IFI27)遺伝子発現のレベルは患者血清中の免疫グロブリンIgG値とr=0.600,p<0.01の有意な正の相関を示した。2)real time-PCR法による解析の結果,ribosomal protein S27とS29遺伝子発現は,リンパ腫合併シェーグレン症候群患者末梢血および唾液腺においてリンパ腫非合併シェーグレン症候群患者末梢血およびシェーグレン症候群非合併リンパ腫症例のリンパ節と比べて増大していた。3)1例のリンパ腫合併シェーグレン症候群患者末梢血におけるribosomal protein S27とS29遺伝子発現レベルを治療前後で測定したところ,病勢と平行した推移を示した。【考察】シェーグレン症候群患者末梢血におけるIFI27遺伝子発現はその病勢と,またribosomal protein S27とS29遺伝子発現はリンパ腫発症と関連していることが示唆された。
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