(1)ヒト・メタニューモウイルス(hMPV)のF蛋白に対するモノクローナル抗体が2株得られた。In vitroの培養細胞系を利用したhMPV感染阻止実験の結果、この抗体は中和活性をもつことが証明され、F蛋白はhMPVの中和活性に重要な役割を果たしていることが示唆された。 (2)バキュロウイルス系を用いてF蛋白を大量に発現させた細胞を抗原とした蛍光抗体間接法を行い、ヒト血清中に存在するF蛋白に対する特異抗体価を測定した。その結果、ヒト血清中の抗hMPV抗体の大半はF蛋白に対する抗体であることが判明した。さらに、hMPV感染LLC-MK2細胞を用いた蛍光抗体間接法で抗hMPV抗体を測定するよりも、F蛋白を大量に発現させた細胞を抗原として用いた蛍光抗体間接法で測定したほうが高感度と判明した。 (3)大腸菌系を用いて作製したhMPVのN及びM蛋白を抗原として用いたWestern blot法にて、ヒト血清中に存在するN及びM蛋白に対する特異抗体の有無を測定した。抗hMPV抗体価80倍以下の血清中の抗N及びM蛋白抗体検出率が2/48(4%)であったのに対して、抗hMPV抗体価160倍以上の血清中の抗N及びM蛋白抗体検出率は30/49(61%)及び31/49(63%)であった。 (4)下気道感染症の入院患者の鼻咽頭拭い液を材料として、モノクローナル抗体を利用した蛍光抗体法にてhMPV抗原の検出を試みた。RT-PCR法を用いたHBoVゲノムの検出では48人中15人が陽性(31%)であったのに対して、モノクローナル抗体を利用した蛍光抗体法では48人中12人の陽性(25%)に留まった。hMPV検出感度は73.3%、特異性は97.0%であった。
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