研究概要 |
(背景と目的)我々はすでにマウスモデルにおいて乳児喘息では気道粘液過分泌が症状の増悪に重要な役割を果たすことを報告した(ohki, Tokuyama et al 2005)。今回はアレルゲン吸入後の遅発型喘息反応(以下LAR)における粘液過分泌の役割を解明するため、形態学的計測法の開発を試みた。一方、Disodium Cromoglycate(以下DSCG)は乳児喘息の予防・管理上推奨されている薬物であるが、この形態学的計測法を用いて粘液過分泌に対するDSCGの抑制効果も合わせて検討した。(方法)BALB/Cマウスに対して、卵白アルブミン(ovalbumin:以下OVA)にて腹腔内感作を行った。感作後1%OVA溶液を1日1回3日間吸入させたのち、5%OVA溶液にて気道反応を誘発した。DSCGの効果を検討するために,一部のマウスは5%OVA溶液による誘発の1時間前にDSCGを前投与した。気道閉塞の指標としてenhanced pause (Penh)を経時的に測定した後,血液と気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取した。その後,肺組織を採取し、粘液産生について形態学的に解析し検討した。(結果)感作マウスでは、OVAによる誘発にて二相性のPenhの増加(IAR,LAR)が認められた。同時に両反応時にBALF中の好酸球増加が認められた。形態学的計測による気道内粘液量はLAR時に有意な増加を認めたが、即時型反応(IAR)時には増加しなかった。DSCGはIAR,LARをともに有意に抑制し、これまでの報告と同様の結果であった。さらに,DSCGはLAR時の気道粘液増加を有意に抑制した。(結論)気道粘液過分泌はLAR時における気道閉塞の1因子であることが示唆された。また、DSCGのLAR抑制機序の1つに気道粘液の過分泌に対する抑制作用がある可能性が示唆された。DSCGは、特に乳幼児喘息の病態生理にかなった薬物であるかもしれない。
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