免疫グロブリン治療が無効な川崎病難治例では冠動脈瘤が高率に発生し、難治性川崎病に対する新たな治療法の確立は社会的ニーズが高い。現在までの多くの研究成果から、難治性川崎病の病態にVEGF・VEGF受容体系が深く関わっていることが判明している。本研究では、VEGFやVEGF受容体を標的とした新たな抗炎症療法の可能性を解析する。本年度は、インビトロアッセイ系を用いて、川崎病で多量に産生されるVEGFが本当に血管透過性をもたらすのかを検証した。 川崎病患者血清では、血中VEGFは健常対照に比べ増加していた。また、これら患者血清を用いて、臍帯静脈血管内皮細胞の培養系に5%濃度の血清を添加し、培養臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性をインビトロで検討した。まず、川崎病の治療薬として用いられている、免疫グロブリンやアスピリンそのものは培養臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性に影響は与えなかった。 次に、患者血清について検討した。治療前川崎病患者血清は、健常対照者血清に比べて臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性機能には差が認められなかった。次に、免疫グロブリン治療後の患者血清を用いて検討したところ、免疫グロブリン治療により反応のあった患者群の血清には培養臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性機能には影響を与えなかったが、免疫グロブリンに抵抗を示しその後冠動脈異常を来たした抵抗例の血清を用いると、培養臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性が有意に増加した。また、VEGF受容体の抗体およびVEGFリガンドの生理活性抑制因子である可溶性VEGFR-1のいずれの前処理においても免疫グロブリン抵抗例の血清による血管透過性機能の亢進を抑制することができた。 以上より、患者血清にはVEGFが含まれており、治療抵抗例の血管透過性に重要な役割を果たしていることが推測される。
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