免疫グロブリン治療が無効な川崎病難治例では冠動脈瘤が高率に発生し、難治性川崎病に対する新たな治療法の確立は社会的ニーズが高い。現在までの多くの研究成果から、難治性川崎病の病態にVEGF・VEGF受容体系が深く関わっていることが判明している。本研究では、VEGFやVEGF受容体を標的とした新たな抗炎症療法の可能性を解析した。初年度は、インビトロアッセイ系を用いて、川崎病で多量に産生されるVEGFが本当に血管透過性をもたらすのかを検証するため、患者血清について検討した。治療前川崎病患者血清には差が認められなかったが、免疫グロブリン治療抵抗例の血清を用いると、培養臍帯静脈血管内皮細胞の血管透過性が有意に増加した。また、VEGF受容体の抗体およびVEGFリガンドの生理活性抑制因子である可溶性VEGFR-1のいずれの前処理においても免疫グロブリン抵抗例の血清による血管透過性機能の亢進を抑制することができた。 最終年度は患者血清がもたらす培養膀帯静脈血管内皮細胞の血管透過性を阻害する薬物を探索した。VEGF受容体の下流にあるp38MAPKの役割に着目した。P38MAPK阻害薬(SB203580)をアッセイ系に前処置して検討した結果、免疫グロブリン治療抵抗例の血清にみられた血管透過性亢進作用は阻害された。また、その他のERK阻害剤ではこのような効果は認めず、川崎病血清に存在する血管透過性作用は、p38-MAPKを介している可能性が示唆された。p38MAPK阻害剤の治療薬としての可能性を今後検討することも必要と思われる。
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