気道の慢性炎症ではリモデリングによる構造変化を伴うことが多い。気管支喘息では気管支に生じるリモデリングが遷延する呼吸機能低下の一因になると考えらており、リモデリング発症の危険因子を同定することは、喘息重症化の対策を講じる上で重要となる。気道リモデリングには様々なサイトカインや成長因子が関与することが報告されている。喘息患者の気道で増加しているロイコトリエン(LT)やエンドセリン-1(ET-1)もリモデリングに関与することが示唆されているが、その相互作用については明らかになっていない。そこで、ヒト肺正常線維芽細胞を用いてその相互作用の解析を行った。その結果、エンドセリン-1で線維芽細胞を刺激するとシステイニルロイコトリエンレセプター(CysLTR)のmRNA、蛋白の発現増強が認められた。10^<-7>MのLTD4はET-1で刺激された線維芽細胞のα-平滑筋アクチン、カルポニンの発現を増強し筋線維芽細胞への分化を促進したが、ET-1刺激を受けていない線維芽細胞の分化には影響を与えなかった。ET-1刺激は内因性のTGF-β1産生を増強したが、内因性のTGF-b1はET-1による分化誘導には関与していないと考えられた。LTD4はET-1刺激を受けた線維芽細胞のマトリックスメタロプロテナーゼ2産生とI型コラーゲン産生を増強した。CysLTR1の選択的阻害剤はLTD4の効果を抑制した。これらの結果から、LTD4はET-1により惹起される気道リモデリングをさらに増悪すること、CysLTR1の選択的阻害剤は細胞外基質の過剰な分解を抑制するのに有用であることが示唆された。また、CysLTRの発現誘導とLTD4に対する反応性は、気道リモデリングに関与する因子の役割を解析する上で有用なマーカーと考えられ、末梢血線維細胞を用いてのハイリスク患者の同定への応用が期待された。
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