研究概要 |
血球貪食症候群は、ウイルスや細菌などの感染や悪性疾患・自己免疫疾患などがその原因となり、マクロファージがこれらの病態のもと異常活性化され貪食能が亢進した状態と考えられている。ウイルス感染に伴って本疾患が発現した場合、とくにvirus-associated hemophagocytic syndrome : VAHSと呼ばれているが、このときNK細胞によるウイルス感染細胞の排除機構の障害・遷延化とともに、Th1優位となったリンパ球から産生されるインターフェロンγが過剰の状態となり、マクロファージが異常活性化され貪食能が亢進した状態が、本態と考えられている。 我々は好中球において、キサンチン製剤による顆粒球の細胞死誘導と、それによる抗炎症効果。食細胞の寿命を延長し炎症の持続や重篤化をもたらすGM-CSFによる好中球の細胞死の抑制が、PI3-kinaseの活性化とAktのリン酸化によるカスパーゼ酵素の直接調節であることを示し、好中球のアポトーシスがH_2O_2産生とカスパーゼ3依存性の機構に関与し、SODの存在で増強するレドックス制御に関する検討を行ってきた。その結果、炎症担当細胞のアポトーシスを誘導することによる食細胞性炎症の沈静化が、重要な炎症治療の戦略となりうると考えた。 マクロファージも活性酸素を産生し、条件によって微生物の殺菌に用いられる反面、自己のアポトーシスをもたらし、炎症を調節していると考えられる。 現在のところVAHSに有効な治療薬(VP-16,vincristine)は単球由来の細胞(U937)のアポトーシスを惹起することが知られるものである。今回の研究期問内では充分なデータが集積できなかったが、マクロファージにおけるアポトーシスのレドックス制御に関する検討はきわめて臨床的な価値の高いものと考えられ、実施可能性、有用性の高いものと認識している。
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