研究課題
重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:以下SCIDと略す)は,T細胞が欠損し細胞性と液性免疫能が著しく障害され、造血幹細胞移植などの根治治療がなされなければ乳児期に重症感染症によって死亡する。SCIDの約半数は末梢血B細胞を認め、サイトカイン受容体を構成するcommon γ鎖の異常である。残りの半数はB細胞が欠損しDNAの切断や接続に関与するRAGやArtemisの異常である(B細胞欠損型SCID)。本邦においてはB細胞欠損型SCIDの原因は、RAGの異常はきわめて少なく、多くはArtemisの遺伝子変異である。私たちは、4例(内2例は信州大における移植成功例)のArtemisの遺伝子変異を本邦ではじめてみいだした報告した(小林、上松: Human Genet 2002;上松: Clin Exp Immunol 2001)。さらにその後、紹介患者の中から数例の本症をみいだしており、遺伝子解析をおこなった。重症複合免疫不全症は、診断が遅れる傾向があり、また、移植方法が統一されていないため患者予後が施設によって大きく異なる。本研究によって本邦における遺伝子解析の1つの拠点となり重症複合免疫不全症の早期診断と造血幹細胞移植方法が確立することができた。特に、共同で移植プロトコールを作製し、本症治療の啓発ができた。また、当科で豊富に恵まれている症例において,さまざま観点から原発性免疫不全症の解析を進め,早期診断と的確な治療を行うこともできた。
すべて 2006
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