ペルオキシソームは真核細胞に存在する細胞内小器官の1つで脂肪酸β酸化など脂質代謝を中心に生体に重要な代謝機能を有している。本研究者らはペルオキシソーム脂肪酸β酸化の先天性代謝異常症患者におけるタンパク、遺伝子レベルの解析、およびモデルマウスを用いた解析を通じて、ペルオキシソームにおける脂質代謝の障害が神経発生や生活習慣病などの発症に関わるメカニズムを解明し、治療法の開発に取り組んでいる。平成17年度は日本人患者解析を中心に以下の成果を挙げたので報告する。 1.ペルオキシソームβ酸化系酵素欠損症であるAcyl-CoA oxidase欠損症3例、D-二頭酵素欠損症7例における臨床像、遺伝子型、タンパクレベルでの比較検討を行い、その病態を明らかにした。 2.この研究過程においてD-二頭酵素における新規のSNPを発見し、日本人集団でのゲノム解析において6.7%に認めることを明らかにした。本酵素の完全欠損症患者では極長鎖脂肪酸の蓄積、胆汁酸の代謝異常を認めて乳幼児期に死亡する。今後、このSNPにおける脂肪酸酸化活性を検討し、脂質代謝にかかわる生活習慣病集団と対象との臨床、SNP解析を行う予定である。 3.ペルオキシソーム病の中で最も頻度の高い日本人副腎白質ジストロフィー患者の自然歴を全国調査にて明らかにし、脂肪酸代謝異常と病態との関連および骨髄移植による治療効果について明らかにした。 18年度においては引き続き、ペルオキシソーム脂質代謝の生活習慣病に対するエビデンスを追求するとともに、モデルマウスを用いた検証も併せて行う。
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