ペルオキシソームは真核細胞に存在する細胞内小器官の1つで脂肪酸β酸化など脂質代謝を中心に生体に重要な代謝機能を有している。本研究者らはペルオキシソーム脂肪酸β酸化の先天性代謝異常症患者におけるタンパク、遺伝子レベルでの解析、およびモデルマウスを用いた解析を通じて、ペルオキシソームにおける脂質代謝の障害が神経発生や生活習慣病などの発症に関わるメカニズムを解明し、治療法の開発に取り組んでいる。平成18年度は17年度に引き続いて、以下の成果を挙げたので報告する。 1.ペルオキシソームβ酸化系酵素欠損症であるD-二頭酵素欠損症日本人患者の血清脂肪酸分析により、極長鎖脂肪酸の蓄積以外にフィタン酸の蓄積を認めることを明らかにし、より詳細なペルオキシソーム脂質代謝スクリーニングシステムを実現した。 2.本研究過程においてD-二頭酵素における複数の一塩基変異SNPを発見し、日本人集団での頻度も明らかにした。本酵素の欠損症患者では極長鎖脂肪酸の蓄積、胆汁酸、フィタン酸の代謝異常を認めており、引き続き、このSNPによる代謝活性への影響を検討し、脂質代謝異常による生活習慣病患者集団と対象との比較研究を行う。 3.脂肪酸分析によるペルオキシソーム病スクリーニングの過程で、軽度の異常を呈する患者を発見し、現在、その病因を生化学、分子生物レベルで解析中である。 本研究成果により実働可能となったペルオキシソーム代謝機能解析システムとゲノム解析システムにより、ペルオキシソーム脂質代謝の生活習慣病に対するエビデンスを追求する。
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