研究概要 |
ヒストンアセチル化酵素阻害剤であるdepsipeptideが、rhabdoid腫瘍に対してin vitro及びin vivoにおいて、AIFの核への移行により、autophagic細胞死を誘導した。Depsipeptideはrhabdoid腫瘍細胞株(KP-MRT-NS,STM91-01,TTC549)に対して、in vitroにおいてアポトーシスを誘導し、IC50は0.7nM-3.7nMと低濃度であった。アポトーシスの機序は以前に我々が骨肉腫細胞株において報告したように、caspase8及びcaspase3を介する系であった。しかしcaspase阻害剤であるzVAD-fmkを同時投与しても、細胞死は抑制されず、その機序は電顕所見及び生化学的解析(LC-IIの出現)からautophagyであることが判明した。また、このautophagyにはAIFの核への移行が随伴していた。AIFをsiRNA法により、減弱させるとautophagyが観察されなくなったことより、AIFはdepsipeptideによるautophagy誘導に必須であることが証明された。次にRhabdoid腫瘍を皮下移植したマウスモデルにおいて、depsipeptideは著名な腫瘍増殖抑制効果を示した。このin vivoの系においても、電顕的にautophagyを証明し、また免疫電顕法でAIFの核への移行が、観察された。近年、固形腫瘍における抗がん剤の細胞死誘導機序として、autophagyが注目されているが、本研究はこのautophagyにおいてAIFの核移行が必須であることを証明した初めての報告である。
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