研究概要 |
抗癌剤による細胞死は、近年アポトーシス以外の細胞死の機序が注目され、我々はBcr-Ab1陽性白血病細胞株に対する分子標的療法薬imatinib mesylate(IM)のプログラムされたネクローシス様細胞死の報告をした。(Blood 2004,103;2299)今回、難治性固形腫瘍Rhabdoid細胞株及びBcr-Abl陽性白血病細胞においてアポトーシスを抑制するとオートファジーが出現することを見出し、その機序について検討した。各種Rhabdoid細胞株においてHDAC阻害剤(depsipeptide)投与により、in vitro及びin vivoでオートファジーが検出され、電顕、免疫染色、western blotting法で確認された。カスパーゼ阻害剤投与でアポトーシスを抑制するとオートファジーは増加し、オートファジー細胞の核へのAIF移行がin vivo, in vitro共に観察された。AIFのsiRNAにより、オートファジー細胞は減少し、AIFの核移行がオートファジー誘導に必要であることが示された。新規Bcr-Abl阻害剤INNO-406投与時にアポトーシスを抑制すると、アポプトソーム活性の低いBcr-Abl陽性白血病細胞ではカスパーゼ非依存性アポトーシスが誘導され、アポプトソーム活性の高いBcr-Abl陽性白血病細胞ではネクローシス様細胞死とオートファジーを認めた。オートファジーを阻害すると有意に細胞死誘導が増強された。またINNO-406投与後の白血病モデルマウスの骨髄、脾臓で典型的なアポトーシス細胞と共にカスパーゼ非依存性のネックレス様の核を呈する死細胞が散見され、in vivoにおいてもカスパーゼ非依存性細胞死の誘導が明らかとなった。INNO-406により誘導されたオートファジーは細胞死回避の役割を果たしており、新たな治療ターゲットとなりうることが示唆された。
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