研究課題
基盤研究(C)
申請者はプロスタグランジン(PG)D_2がCNSにおける炎症性メディエーターであること、造血器型PGD合成酵素(HPGDS)がミクログリアに発現し、PGD_2の特異的レセプターDP1、DP2の内DP1はアストロサイトに発現することを見いだしている。本研究で我々は培養グリアおよび遺伝性脱随マウスtwitcher (Tw)を用い、PGD_2の脱随に及ぼす作用を解明した。結果、培養ミクログリアを用いた検討では、DP1作動薬によりミクログリアは活性化し、DP2作動薬では活性化が抑制された。また、培養アストロサイトを用いた検討ではPGD_2、DP1作動薬、DP2作動薬を添加すると、いずれにおいても活性化アストロサイトのマーカーであるGFAPの発現は増加した。これらの結果より、(1)ミクログリアのHPGDSにより産生されるPGD_2はautocrine的にDP1を介してミクログリアを活性化し、HPGDSの産生を増加させる反面、DP2を介してはミクログリアを不活性化しHPGDSの産生を低下させるという2面性を持つこと、(2)DP1・DP2いずれの刺激によってもアストロサイトは活性化されること、(3)脱随に関連するサイトカインの内、DP1刺激によりミクログリアにおいてIL-1βの産生が、アストロサイトにおいてIL-6の産生が促進されることがわかった。次にTwを用い、HPGDS阻害により脱随が抑制されるかの検討を行った。方法はHPGDS欠損マウスもしくはDP1欠損マウスとTwの交配によりHPGDS欠損TwまたはDP1欠損Twを作成、もしくはHPGDS特異的阻害剤であるHQL-79をTwに投与し、それぞれの病理変化を検討した。結果、いずれのTwにおいても脱随およびグリオーシスが軽減し、驚くべきことにオリゴデンドロサイトのアポトーシスも抑制された。これらの結果より、HPGDS阻害剤による脱随疾患進行抑制治療の可能性が示唆された。
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