研究概要 |
平成19年度研究計画予定に基づく進行状況 (1)検体の採取 急性散在性脳脊髄炎例集積のために、小児神経学会評議員の勤務する90施設および全国の78大学病院神経内科に対し、書面で研究への参加を呼びかけた。本研究への参加に同意した施設に対しては、われわれと共同で、遺伝子倫理委員会への本研究の申請を行った。平成19年度末までに15施設が倫理委員会の承認を得た。各施設で文書による同意を得たADEM患者より血液を採取し、DNA保存を行った。 (2)ADEM患者のデータベースの作成 上記倫理委員会の審査を終了した施設から、同意を得たADEM患者の臨床資料を収集し、データベース化した。19年度末までにADEM31例(男15女16)を集積した。ADEM症例の発症年齢(中央値)は7歳(11か月〜51歳)で、23例が感染後、4例がワクチン接種後であった。74%に発熱を認め、歩行障害(58%)、意識障害(45%)で発症し、軽度の炎症所見(白血球数平均11,000/μl、CRP平均0.84mg/dl)と髄液細胞増多(平均92/μl)を認めた。病変は皮質下白質(57%)、脳室周囲白質(63%)、脳幹(43%)、小脳(33%)、脊髄(27%)に認められた。 (3)遺伝子多型解析 2007年、多発性硬化症患者の大規模集団でのゲノムワイド研究の結果が報告され、HLA-DRA遺伝子、IL2RA遺伝子およびIL7R遺伝子に存在する一塩基多型(SNP)が多発性硬化症と関連を示すことが明らかにされた。この報告を受け、直ちにADEM患者のDNAを用いて、多発性硬化症に疾患感受性を示すことが報告されているHLA-DR遺伝子、IL2RA遺伝子、IL7R遺伝子の解析を行った。報告されているSNPを用いてADEM群と対照群で相関解析を行ったが、遺伝子型頻度、アレル頻度ともに有意な相違は認められなかった。
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