われわれは、国際治験により遺伝子組み換え酸性αグルコシダーゼ酵素の投与が行われた乳児型ポンペ病(糖原病II型)患者の診療にあたっている。この症例において投与されている遺伝子組換え酵素に対する抗体が産生されていないことから、酵素の投与を継続しつつ、本人の抗体産生について遺伝的背景と、免疫機能の検討を行っている。 1、症例に対するヒト組換え酸性αグルコシダーゼの投与 われわれは乳児型ポンペ病の患児に対し、国際治験終了後まだ市販されていない遺伝子組換え酵素を治験実施企業からの供与を受け、患児の両親の同意のもと投与している。投与により肝機能検査や血清CK値などの改善は見られていないものの、筋力低下、心機能の低下など本来の同疾患による症状の進行は見られていない。年齢相当とはいえないが、発達もみとめられている。 2、遺伝子異常の解析 患者保護者から同意を得て患者リンパ球よりゲノムDNAを分離した。酸性αグルコシダーゼ遺伝子の全配列をPCR法により増幅し解析をおこなっているが、現時点で明らかな遺伝子異常は確認されていない。遺伝子解析に必要なコンピューターを購入しており、今後検索を進めていく予定である。 3、ヒト組換え酸性αグルコシダーゼの抗原性の検討 国際治験は終了しているが、投与中の遺伝子組み換え酵素はいまだ市販されていない。治験実施企業からの協力は現在得られておらず、抗原性の検討は進んでいないが、患者の抗体産生能力について、免疫機能の評価を行っている。免疫グロブリン値など現時点で異常は認められていないが、感染症による入院が頻回に見られており、さらなる検討が必要と思われる。
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