1、ヒト組換え酸性αグルコシダーゼの投与 われわれは乳児型ポンペ病の患児に対し、国際治験終了後も治験実施企業からの供与をうけ、保護者の同意のもと、遺伝子組換え酵素を投与している。筋力低下、心機能低下などの症状の進行はみられていなかったが、急性気管支炎、肺炎などの気道感染症を繰り返した。発熱などの状態不良や家族の都合などにより投与が1か月以上できないことがあり、その後重症肺炎に罹患し人工呼吸器管理、集中治療が必要となった。集中治療室でも酵素投与を行い状態は改善したが最終的に気管切開が必要となり、人工呼吸器からは離脱できたものの、常時酸素投与が必要であり、在宅酸素療法併用という形で外来管理となった。現在は外来管理中であるが、酵素補充療法は多少の発熱程度であれば、投与を行うこととしている。ただし、気道感染はその後も繰り返されている。 2、遺伝子異常の解析 患者皮膚線維芽細胞の培養細胞からtotal RNAを抽出し、RT-PCR法にてcDNAを増幅し、塩基配列を決定したところ、ミスセンス変異(796 C>T)を認めた。この変異は軽症例での報告がみられている。この変異はゲノムDNAのシークエンスでは、正常とのヘテロ変異として認められており、正常アレルがmRNAレベルで発現していないことに関してはさらなる検討が必要である。 3、ヒト組換え酸性αグルコシダーゼの抗原性の検討 本研究開始当初、本症例では1年以上の同酵素の投与にも関わらず、投与された酵素に対する抗体が産生されていないという報告を受けていたが、その後抗体が産生されていることが明らかになった。気道感染症を繰り返すことから本児の免疫機能と遺伝子変異についての関連も疑われたが、上記の通り、遺伝子変異は既報のものであり、本研究で行った、免疫グロブリン、リンパ球幼弱化反応などによる検索では異常所見は認められなかった。
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