研究概要 |
1)腸管凝集性大腸菌enteroaggregative Escherichia coli(EAEC)のバイオフィルム関連因子 EAECの外膜表層に存在し,凝集した菌を散乱させる蛋白Aapが同定され,抗バイオフィルム因子として注目されている。我々は,このAapの分泌を促進するEAEC特異的ABCトランスポーター(Aat)と外膜排出蛋白(AatA)をクローニングしたが,AatAはその3次構造から,大腸菌の異物排出蛋白TolCのホモログと考えられる。今年度はAatAの構造・機能解析を行い,AatAのC末端10〜12番目の3非極性アミノ酸残基が,Aapを分泌するために重要であることを明らかにした。さらにEAECにおいてTolC遺伝子や未知遺伝子shfをノックアウトすることで,EAECバイオフィルム形成が著明に低下することを明らかにし,これら遺伝子群がバイオフィルム形成と関連していることが示唆された。 2)nontypable H.influenzae(NTHi)のバイオフィルム関連因子 NTHi108株の付着因子,線毛(hifA),付着蛋白HMW1/2,Hia, Hapとバイオフィルム形成能との関連を検討した。バイオフィルム形成能はマイクロタイタープレート法で定量化した。付着遺伝子保有頻度は,hifA 22.2%,hmw 48.1%, hia 55.6%,hap22.2%。hifAとhia陽性株には有意にバイオフィルム陽性株が多かった(p=0.025,0.036)。反復性下気道感染症患者由来株は強いバイオフィルム形成能を示した。 3)MRSAのバイオフィルム形成能とagr型 病院で分離されるMRSAのバイオフィルム形成能とquorum-sensing geneであるagrの遺伝子型を検討した。感染症患者由来株は保菌患者由来株に比べてagr2株が多く,有意にバイオフィルム形成能が強かった。
|