研究概要 |
1.RSウイルス野外株の収集 RSウイルス株は、1980〜2002年に札幌と東京の市街地区に居住する生後1ヶ月から3歳までの下気道感染症を呈した乳幼児より、HEp2細胞を用いて分離され、-80℃に保存された物を用いた。RSウイルスの同定とサブグループ(A,B)の判定は、サブグループA、B特異的な単クローン抗体、あるいはサブグループの判定が可能なRT-PCR法を用いて行った。集められたのは全部で113株で、A株が53株(札幌32株、東京17株)、B株が56株(札幌41株、東京15株)であった。 2.RSウイルス野外株の遺伝子解析 RSウイルス野外株をHEp2細胞にて再分離し、感染細胞からRNAを抽出した。RSウイルスのG遺伝子の高変異領域をRT-PCR法にて増幅し、その産物のダイレクトシークエンスを行った。これらに、既知の遺伝子型(A株:GA1 ̄7;B株:GB1 ̄4,SAB1 ̄3)の代表とされる欧米、アフリカの分離株を加えて、neighbor-joining法(MEGA3β version3)にて系統樹解析を行った。本邦の株は、既知の遺伝子型のうち、A株は5(GA1,2,4,5,7)、B株は4(GB1,3,4,SAB3)遺伝子型に属すると共に、本邦独自と考えられたのが、A株、B株、それぞれ1遺伝子型存在した。 3.RSウイルス下気道炎を呈した乳幼児の予後調査 それぞれの症例のRSウイルス感染症の重症度、その後のRAD(reactive airway disease)発症の有無、更に気管支喘息発症の有無と、その内容(アトピー型、非アトピー型)などに付いて、現在、診療録、あるいは電話による聞き取り、アンケート票の郵送などによる調査を開始している。
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