【目的】ヒトRSウイルス(RSV)感染に対する自然免疫応答として、Toll-like receptor3(TLR3)の関与及びその抗ウイルス機構を解明することを目的とした。初年度はサル腎細胞にヒトTLR3遺伝子を一過性に発現させ、RSV感染後のウイルス産生量をコントロール細胞と比較した。次年度はTLR3のリガンドである2本鎖RNAをRSV感染細胞に添加し抗RSV作用を調査した。 【方法】サル腎細胞由来COS-7細胞へヒトTLR3遺伝子発現プラスミドベクターpUNO-hTLR3-HA(Invivogen)及びコントロールベクター(pUNO-HA)をトランスフェクションし、24時間後にRSV Long株を感染させた。感染24時間後の培養上清中のRSVRNAをreal-time RT-PCR(Applied Biosystems)にて定量した。2本鎖RNA(poly(I:C))をHeLa細胞に添加し24時間後にLong株を感染させ、48時間後に培養上清からウイルスRNAを抽出しreal-time RT-PCRにてRSVを定量した。また感染細胞におけるインターフェロン(IFN)-βmRNA発現も同様の方法にて定量した。 【結果】ヒトTLR3発現COS-7細胞培養上清中のRSV量は、コントロール細胞と比較し有意に低下していた。またRSV感染HeLa細胞培養上清中のRSV量は、poly(I:C)添加群では非添加群と比較して有意に減少していた。興味深いことにpoly(I:C)添加RSV感染細胞でのIFN-β遺伝子発現も、コントロール細胞と比較し有意に減少していた。 【考察】本研究によってRSV感染に対するTLR3の抗ウイルス作用が明らかにされた。この抗ウイルス作用はTLR3の細胞内シグナルがIFN-βを誘導した結果として現れたものではない可能性が示唆された。
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