研究概要 |
本年度はマウスのMRIの計測機器を調整し、拡散画像法の精度を高めた。また、shiverer mouseと18番染色体長腕欠失(18q-)症候群対して、病理学的検索を加え、画像異常の原因についてさらに追及した。 1)マウスの磁気共鳴画像法の開発 マウスの鮮明な拡散画像を得るために、磁場の均一性と高い信号強度が得られる、直径27mmの円形コイルを2個組み合わせたサドルコイルの開発をおこなった。動物用磁気共鳴装置(ブルカー社BIOSPECBMT24/40 2.4Tesla)を用い、拡散画像法として既に独立行政法人産業技術総合研究所でラットに対して用いられたパルスシーケンスを調整し、マウスMRIに応用した。本年度はさらに拡散画像法についてラットを用いて精度を上げトラクトグラフィ作成をおこなった。 2)shiverer mouseの病理学的検索 shiverer mouseのうちnull mutant(mbp-/-), heterozygous mutant(mbp+/-), wild typeについて、血液を採取しMBP遺伝子をPCR法で検出し遺伝形質を評価した。さらに、生後14,21,35,42日のマウスの脳の病理学的評価を行った。昨年度におこなった一般病理学的検索、免疫組織化学的検索、電子顕微鏡を用いた超微細構造のほかにさらに、Holzer染色およびGFAP抗体による免疫染色をおこなった。グリオーシス並びにGFAP陽性細胞の白質内の増生は認められなかった。 3)18番染色体長腕欠失(18q-)症候群の病理学的検索 18番染色体長腕欠失している環状18番染色体(46XY、r(18)(p11.2、q21.33))の剖検脳について分析した。昨年度の電子顕微鏡を用いた検討では超微細構造では周期線の形成障害はみられなかった。さらに、本年度はHolzer染色およびGFAP抗体による免疫染色を追加したところ、グリオーシス並びにGFAP陽性細胞の白質内の増生がみとめられた。以上から、18q-症候群にみられる頭部MRIでの大脳半球の信号異常の原因はは、これまで一般的に想定されているミエリン形成障害ではなく、グリオーシスを反映している可能性が本研究で始めて明らかになった。
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