申請者らは、グリア細胞成長因子(GMFB及びGMFG)の神経系分化における働きを詳細に明らかにするため、神経発生・分化過程や脳損傷後におけるGMF発現変化の詳細な検討を行い、これを基盤にGMFを介した細胞内シグナルの解析、GMFの発現調節機構に焦点をあて研究を進めている。昨年度から本年度は、マウスのGMFGのgenomic DNAの解析を進めた。また、細胞内シグナルの解析のためのモデルを検討するため、凍結によって作成した脳損傷モデルラットを用いて、損傷後の脳組織におけるGMFBの発現変化を検討した。 [1]GMFG genomic DNAの解析:マウスGMFGのgenomic DNAをクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、マウスのGMFGは、ヒトと同様7つのexonより構成されることが判明した。Promoter部位はTATA lessで、housekeeping gene様のGC rich promoterであった。現在、転写開始点の同定と、ルシフェラーゼアッセイを用いたエンハンサー領域の解析を行っている。 [2]ラット脳凍結損傷モデルにおけるGMFBの発現変化:Wistar系ラットの大脳皮質に凍結損傷を作成し、損傷後のGMFBの発現変化を検討した。その結果、GMFBは、損傷周囲の反応性アストロサイトに強く発現していた。mRNAおよびタンパク発現は、損傷後上昇し、14日をピークに以降減少した。これらの結果から、脳損傷後の修復過程においてGMFBが何らかの役割を担っていることが考えられた。
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