研究概要 |
従来から施行されている各凝固関連因子の測定法のみでは全般的な凝固機能を評価することは困難である。本研究では凝固波形解析やトロンビン生成試験を中心に血液凝固機能を評価することを目的とする。平成18年度は下記の研究を実施した。 1)トロンビン生成解析法の至適評価法の確立:トロンビン生成測定に影響を及ぼすリン脂質、カルシウムイオンおよび組織因子などの凝固惹起因子の至適条件について評価を行った。方法はトロンピン生成波形(トロンボグラム)からトロンビン生成速度、トロンビン生成最大値、最大値にいたる時間、内因性総トロンビン生成量などのパラメーターを算定して定量的に評価した。さらに、凝固波形解析を同じ検体で実施し、凝固開始時間、凝固速度、凝固最大速度、凝固加速度および凝固最大化速度などのパラメーターと比較した。また、トロンビン生成測定法の測定感度をあげるためにエラジン酸添加系についても検討した。その結果、微量な組織因子存在下でエラジン酸を添加した測定系が最も感度が高く第VIII因子活性く1%の微量域の凝固機能を反映した。 2)凝固波形・トロンビン生成に影響をおよぼす凝固促進・制御機構に関する検討:第VIII因子とトロンビン、活性型第X因子、活性型第VII因子およびプラスミンとの相互作用について分子間相互作用や酵素抗体法に基づく結合実験、限定分解パターンおよび酵素/基質反応速度カイネティックス実験を実施し、第VIII因子活性化・制御機構とトロンビン生成との関連性について検討した。 3)出血性疾患では血友病A,血友病B.von Willebrand病、後天性血友病、血栓性疾患ではDIC,ネフローゼ症候群、川崎病、敗血症、白血病および各種悪性腫瘍の移植前後などの臨床経過における凝固機能を凝固波形、トロンビン生成試験にて定量的に評価した。さらに、得られたそれぞれの疾患の凝固機能に基づき、各種止血、抗凝固療法の効果および有用性にっいて検討を行った。
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