研究概要 |
本研究では全凝固過程をリアルタイムにモニタリングして解析する凝固波形解析およびトロンビン生成試験を比較検討することにより凝固機能をグローバルに評価すること、さらに、凝固機能を制御機構について主に第VIII因子や第V因子の活性化・不活性化機構を明らかにするために研究を実施し、下記の研究成果を得た。 1)凝固波形解析とトロンビン生成能:第VIII因子欠乏あるいは第IX因子欠乏血漿において凝固時間、最大凝固速度および加速度などの凝固波形パラメーターはトロンビン生成の定量的パラメーターと良好に相関した。さらに、凝固波形解析では第VIII因子の超微量域においても評価可能であった。第VIII因子活性が<0.2IU/dlの重症血友病A患者では凝固波形パラメーターは著しく障害され、臨床的重症度とも一致した。トロンビン生成試験は使用するトリガー試薬で変動が多いが、内因系トリガーであるエラジン酸と組織因子を添加した系がもっとも測定感度が高かった。 2)第VIII因子の活性化・不活性化機構:第VIII因子はトロンビンにより重鎖A2ドメインArg372を限定分解を受けて活性化第VIII因子に変換され凝固反応を増幅する。トロンビンの結合部位をA2ドメイン内484-509内に同定し、さらに、結合部位の必須残基R484, R489, R490, H497, K499を明らかにした。プラスミンは線溶因子であるが、第VIII因子を直接活性化第X因子と同様の部位を開裂して不活性化することをはじめて明らかにした。ただし、活性型第X因子と異なりArg336の開裂が急速に進行した。プラスミンの第VIII因子結合部位を同定した。第VIII因子の活性化発現に重要なフォンヴィレブランド因子やリン脂質の結合部位を第VIII因子C2ドメイン内にそれぞれ明らかにした。
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