1 胎生50、60日に尿路閉塞を行い、満期娩出したヒツジ胎仔の腎臓はそれぞれ低形成腎、異形成腎になる。その機序を閉塞後5、7、20日、満期で娩出した胎仔腎パラフィン切片の免疫組織染色により検討した。閉塞後5日では嚢胞面積の割合に差はなかったが、7日には40±17%vs 23±5%、20日には51±18%vs 17±17%と50日閉塞腎の嚢胞面積が60日閉塞腎に比し有意に大であった。Nephrogenic zoneにおけるPCNA陽性細胞は正常対照腎に比し閉塞腎で減少しており、その減少は50目閉塞腎で著明であった。一方、アポトーシスには50日、60日閉塞腎間の差はなかった。以上の結果は胎生早期の尿路閉塞では嚢胞拡大により後腎間葉細胞増殖が抑制され、低形成腎になる可能性を示唆する。 2 JNKは成熟腎の尿細管に発現し、未分化・脱分化状態にあるヒツジ胎仔尿路閉塞モデル嚢胞上皮では発現・活性が減少している。そこでinner medullary collecting duct(IMCD)細胞をJNK(阻害剤SP600125(SP)存在下に培養し、JNKの細胞増殖、アポトーシス、branching、分化・形質維持における役割を検討した。SPは増殖、branching、E-cadherin、aSMA発現を抑制し、アポトーシス、TGF-β発現を増加した。以上、JNKが増殖亢進、アポトーシス抑制、E-cadherin、aSMA発現誘導、TGF-β発現抑制を介し、尿細管上皮細胞のbranching、分化・形質維持に関与する可能性が示唆された。
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