研究課題
基盤研究(C)
本研究は胎生期尿路閉塞がシグナル伝達の中核的酵素MAPキナーゼの変化を介し、異形成、低形成腎を来すという仮説をin vivoおよびin vitroの実験系を用い検証した。胎生60日で尿路閉塞術を行ったヒツジ胎仔腎は多嚢胞性異形成腎となる。嚢胞上皮において増殖、アポトーシスの亢進、線維化の指標であるTGF-βの発現増加と共にMAPキナーゼの異常(p38、活性型ERK増加、JNK減弱)がみられた。そこで尿路閉塞の流体力学的変化を尿管芽細胞周期的伸展によりin vitroで再現し、MAPキナーゼの病的意義を検討した。p38、ERKは伸展により活性化された。増殖、TGF-β発現も伸展により増加しp38、ERK阻害により抑制された。アポトーシスは増殖より遅れて増加し、p38、ERK阻害、抗TGF-β抗体により抑制された。したがってp38、ERKがTGF-β発現、増殖、アポトーシスを介し胎生期尿路閉塞による異形成腎発症に関与する可能性が考えられた。また分化した腎尿細管細胞であるIMCD細胞をJNK阻害剤存在下で培養することにより、JNKが増殖充進、アポトーシス抑制、E-cadherin発現誘導、TGF-β発現抑制を介し尿細管細胞のbranching、分化・形質維持に関与することが明らかになった。つまりJNKの発現低下も嚢胞上皮の未分化状態と関係すると考えられる。一方、胎生早期(50日)に尿路閉塞したヒツジ胎仔腎は低形成になる。胎生50日、60日閉塞腎を経時的に比較することにより、嚢胞拡大による後腎間葉細胞増殖抑制が低形成腎の原因となる可能性が示唆された。最後に、ERKの病的意義を多発性嚢胞腎のモデルpcyマウスを用い検討した。ERK阻害により腎腫大、嚢胞形成が抑制され、血圧、血清クレアチニン値は有意に低値、尿浸透圧は高値であった。以上よりERK阻害による治療の可能性が示された。
すべて 2008 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (36件)
Kidney International 73
ページ: 1031-1037
Ocular Immunology and Inflammation 16
ページ: 51-53
Kidney Int 73
Ocul Immunol Inflamm 16
J Am Soc Nephrol 17
ページ: 1604-1614
Clin J Am Soc Nephrol 1
ページ: 511-517
Pediatrics 118
ページ: 2557-2560
Eur J Pharmacol 515
ページ: 28-33
Clin JAm Soc Nephrol 1
Clin Nephrol 63
ページ: 477-480