研究概要 |
本研究は,小児がんの易罹患性に関わる候補遺伝子およびその多型・変異の同定、およびそれらの遺伝子変異の機能解析を行い発癌との関連を調べることを目的とする。本年度は、これまでに研究材料として樹立した白血病を含む小児がん230症例の正常B細胞株を用いて、白血病43症例に染色体数増加、転座、切断などの染色体不安定性を認めることを明らかにした。さらに、それらの数症例のB細胞株は健常人由来のB細胞株と比較し、放射線に対する高感受性を示すことを明らかにした。また、白血病51症例および健常人60症例のB細胞株においてATM、CHK2、TP53遺伝子の全翻訳領域の塩基配列を調べ、健常人には認めないgermline変異を6症例に認めることを明らかにした。さらに、DNAマイクロアレイによる発現プロファイルを行い、成人白血病患者や健常人には見られないアポトーシスおよびDNA修復関連遺伝子の発現異常が小児白血病患者に存在することを明らかにした。これらの成績は、ATM、CHK2、TP53などの遺伝子変異がアポトーシスおよびDNA修復径路の破綻を来たし、白血病発症の原因となる染色体異常を誘発する可能性を示唆する。来年度は、本年度未解析の白血病患者の解析を同様に進めるとともに、本年度明らかにした小児白血病患者のgermlineにおけるアポトーシスおよびDNA修復径路に異常を来たすメカニズムを変異遺伝子の導入による細胞の形質変化や変異タンパク質の機能異常を解析することにより明らかにしたい。
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