研究概要 |
背景】近年ネフローゼ症侯群(podocyte disease)はslit膜障害と考えられるようになった。したがってcharge barrierの破綻という教科書的解釈について再検討する必要性が生じている。【方法】IgA(等電点3.5-5.5,Stokes-Einstein radius 61Å)とIgG(等電点4.5-9,Stokes-Einstein radius 49-60Å)について2-D immunoblottingを用いてサイズと荷電を分析した。またIgAとIgGのクリアランス比をcharge selectivity index (CS1)と仮定し、計113名の糸球体疾患患児(腎炎群:Alport 8,HSPN 20,IgAN 39,MPGN 5、ネフローゼ群:FSGS 4,Finnish type CNS 1ステロイド反応性NS 36)におけるcharge barrier機能の検討を行った。【結果と考察】血中に認められる非常に陰性荷電の強い(pl<4.0)IgAはネフローゼ群で尿中に出現しなかったが腎炎群では出現した。ネフローゼ群のCSIは0.57±0.13、腎炎群は1.17±0.35であった(P<0.0001)。このことはネフローゼ群では陰性荷電の強いIgAがcharge barrierの影響を受けて尿中に排泄されにくく、腎炎群では受けずに出現する事を意味する。この傾向はサイズ選択性に関係なく一貫して認められた。以上よりネフローゼ群ではcharge barrierが機能し、腎炎群では機能していない事が証明された。またIgAとIgGのクリアランス比がcharge selectivity indexとして有用である事が確認された。上記結果はPediatric research (59:336-340,2006)誌に掲載された。
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