「アンジオテンシン系が好中球機能に関与している」という仮説を証明するために、アンジオテンシンレセプター(AT1)ノックアウトマウスと野生型マウスの好中球を用いて、活性酸素種(ROS)と一酸化窒素(NO)の産生をフローサイトメトリーで測定した。好中球の免疫機能を評価し、アンジオテンシンが免疫系に関わる作用機序を検討した。 対象: 1 AT1ノックアウトマウスと同系の野生型のC57BL/6マウス。 2 野生型マウスに浸透圧ポンプを皮下に植え込み、アンジオテンシンIIを2週間負荷。 3 経口飲料水からACE阻害薬やアンジオテンシンレセプター阻害薬を添加投与した野生群。 結果: ROS産生: 1)PMA刺激前(無刺激時)にはAT1KOは有意に低値であるが、PMA刺激により、AT1KOは有意に多量のROSを発生する。PMA刺激はAT1を介さない経路でROSを産生しうる。しかしAng IIポンプを植え込んだ群でも、対照よりROSを多く発生したが、ATIKOには及ばなかった。 2)貪食刺激前には、1)と同様にATIKOのROS産生は有意に低値である。Ang IIポンプを植え込んだ群は、貪食刺激前からROSの発生は対照群より高値である。貪食刺激後は、Ang IIポンプを植え込んだ群がさらにROSを発生した。 NOの産生: 貪食刺激前のAT1KOではNO産生は有意に低値である。貪食刺激後もAT1KOは他の群に比べて有意にNO産生は低値である。Ang IIポンプ植え込み群は、貪食刺激によるNOの産生に差はない。 結論 ●貪食によるROS産生にAngIIが果たす役割は大きい。 ●NOの産生にはAngIIは必要であるが、慢性にAngIIで刺激している状態では、更なる貪食刺激によってはNOの産生に差はみられない。
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