科学研究費基盤研究(C)(2)145707929(平成14年〜16年度)「進行性ミオクローヌスてんかん発症機構に関する神経病理学的検討」で、進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病因として重要な遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の剖検脳を解析し、大脳皮質のGABA作動性の抑制性介在神経細胞の障害を明らかにした。本年度は、10例のDRPLA剖検例と5対照において、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・海馬の大脳皮質、線条体・淡蒼球、視床、小脳皮質・歯状核、橋、延髄の連続切片を作製、Kluver-Barrera・抗GFAP染色標本で神経・グリア細胞密度を定量した後、酸化的障害に関する免疫組織化学的解析を行った。蛋白質、脂質、核酸の酸化的障害により産生されるAdvanced glycation end products、Acrolein、8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)と8-hydroxyguanosine(DNase/RNase前処理によりDNA・RNA特異性を確認)の蓄積と、神経系の主たる抗酸化酵素Superoxide dismutase(Cu/ZnSODとMnSOD)の表出を検討した。PMEを呈する若年型DRPLA症例優位に淡蒼球の神経細胞>グリア細胞の核に8-OHdGの蓄積がみられたが、蛋白質・脂質・RNAの酸化的障害関連物質の沈着は全例で認められなかった。また、淡蒼球・小脳皮質・小脳歯状核の神経細胞・NeuropilでのCu/ZnSODがほぼ全例で低下していた。さらにはPMEの既往を有する若年型と早期成人型のDRPLA症例の大脳皮質・海馬・視床・視床下部・小脳皮質においてMnSOD染色性が低下していた。一方、都立府中療育センターに入所している同胞例を含む3名の若年型DRPLA患者から、同意の上、提供された尿に関して、ELISAキットを用いて、酸化的障害関連物質(Hexanoyl-lysine、Acrolein、8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine)の定量を試みたが、有意の異常を見出せなかった。剖検脳の検討により、若年型DRPLAの淡蒼球病変においてDNAの酸化的障害の関与が明らかになった。また、細胞質内のCu/ZnSODがほぼ全例で障害されていたが、PMEの既往を有する若年型と早期成人型DRPLA患者でミトコンドリア内のMnSOD表出低下が認められた。
|