基盤研究(C)(2)145707929(平成14年〜16年度)「進行性ミオクローヌスてんかん発症機構に関する神経病理学的検討」ならびに本研究平成17年度において進行性ミオクローヌスてんかんの病因として重要な歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の剖検脳を解析し、大脳皮質GABA作動性抑制性介在神経細胞の障害とてんかん原性での酸化ストレスの関与を明らかにした。本年度は、進行性ミオクローヌスてんかんと並ぶ難治性年齢依存性てんかん脳症であるWest症候群(WS)・Lennox Gastaut症候群(LGS)剖検例を対象に酸化ストレスに関する検討を行い、研究成果を第110回日本小児科学会学術集会で発表した(2007年4月22日)。対象はWSとLGSの既往が臨床脳波学的に確認され死亡まで強直発作が継続してみられた滑脳症4剖検例(死亡時5-21歳)と新生児仮死後遺症4剖検例(同10-24歳)ならびに年齢相当4対照(同9-29歳)。前頭葉皮質、海馬・側頭葉皮質、視床、小脳、中脳の連続切片を作成、それぞれDNA・脂質・蛋白質の酸化的障害により組織への沈着を認める8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)・4-Hydroxynonenal(4-HNE)・Advanced glycation end product(AGE)に対する免疫組織化学染色を施行した。8-OHdG染色では脳障害の原因とは無関係に、一部の症例の小脳皮質顆粒層や中脳被蓋に陽性核が少量認められた。4-HNE染色では新生児仮死後遺症例優位に、大脳皮質、視床、中脳被蓋において少数の神経細胞リポフスチンが濃染していた。一方、AGE染色では有意の陽性所見を認めなかった。DRPLAに比しWS・LGSではてんかん原性における酸化ストレスの関与は軽度であった。一方、大脳皮質形成異常症でのでんかん原性を検討するため、福山型先天性筋ジストロフィー剖検例9例(死亡時2-27歳)の大脳半球切片でグリア細胞・線維と神経線維・髄鞘形成に関する予備的な免疫組織化学染色を試みた。全例で、年齢・皮質形成異常とは無関係に、前頭・頭頂葉白質優位に有髄線維の減少がみられ、MRI画像での大脳白質信号異常との関連が示唆された。
|