平成17年度は、進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の病因として重要な遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の10剖検例と5対照を解析し、てんかん原性での酸化ストレスの関与を明らかにした(J Neurol Sci 2008;264:133-9)。PME既往を有する若年型DRPLA症例優位に、淡蒼球においてDNAの酸化ストレスマーカー8-OHdGの蓄積を見出した。抗酸化酵素の表出に関しては、淡蒼球・小脳のCu/ZnSOD表出が全例で低下し、PME既往を有する若年型と早期成人型の症例でMnSOD染色性が低下していた。平成18年度は、進行性ミオクローヌスてんかんと並ぶ難治性年齢依存性てんかん脳症であるWest症候群(WS)とLennox-Gastaut症候群(LGS)の既往を有する8剖検例と4対照で酸化ストレスに関する免疫組織化学的解析を行い、器質性病変の有無や病因(滑脳症、周産期障害)とは無関係に、中脳被蓋・黒質に脂質の酸化ストレスマーカーの沈着がみられることを明らかにした。続いて平成19年度には、初発WS乳児においてELISA法による生体資料での酸化ストレスマーカー測定を試みた。生後5〜18カ月のWS小児11名(潜因性7例、症候性4例)と年齢相当の8対照から、医療機関の倫理委員会による承認と保護者の同意を得た上で髄液・尿検体の提供を受けた。症候性4例中3例で8-OHdGの高値が、また、潜因性・症候性の各2例ずつで脂質に対する早期段階の酸化ストレスマーカーであるヘキサノイルリジンの高値が、それぞれ確認された。剖検脳での解析結果と合わせてWSのけいれん発作難治化における脂質の酸化ストレスの関与が明らかになった(投稿中)。
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