研究課題/領域番号 |
17591133
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
高橋 幸利 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・臨床研究部, 部長 (70262764)
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研究分担者 |
藤原 健樹 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・臨床研究部・遺伝子生化学研究室, 室員 (40045513)
田中 正樹 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・臨床研究部・薬理研究室, 室長 (90360809)
西村 成子 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん, 神経医療センター・臨床研究部・遺伝子生化学研究室, 室員 (60393120)
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キーワード | 急性脳炎 / 辺縁系脳炎 / 広汎性脳炎 / GluRε2 / GluRδ2 / 神経細胞死 / IVIG |
研究概要 |
急性脳炎の治療予後を改善するために、急性脳炎の発病・後遺症形成過程におけるGluR自己免疫の関与を解明するための研究を行っている。今年度は以下のような結果を得た。 1.小児の広汎性脳炎におけるグルタミン酸受容体自己抗体 強い意識障害・痙攣重積で発病する小児に多い広汎性脳炎では、GluRε2抗体が髄液中に回復期から後遺症期に出現することが分かった。この自己抗体が出現すると、後遺症としてのてんかん・知能障害が多いことが分かった。髄液GluRε2抗体の出現に繋がる因子としては、入院治療開始後の痙攣重積(p=0.02、フィッシャー直接確率)・IVIG治療(p=0.04、フィッシャー直接確率)が有意であった。髄液GluRε2抗体の出現を防止できる有効な治療法は見出せていないが、痙攣重積を来たさないことが重要と思われる。 2.辺縁系脳炎などの限局性脳炎におけるグルタミン酸受容体自己抗体 急性脳炎の内、軽度の意識障害で始まる辺縁系脳炎などの限局性脳炎では、髄液中のGluRε2抗体は発病初期に出現し、予後とは有意な関連が見られないことが分かった。GluR自己免疫が限局性脳炎の発病時期に機能し、何らかの発病メカニズムに関与している可能性が想定された。限局性脳炎では、22例中3例(13.6%)が軽度の認知記憶障害を来たしたのみで、予後は広汎性脳炎に比較して、比較的良好であった。認知記憶障害につながる因子としては、痙攣重積が有意であった。 3.GluR自己抗体等の液性免疫因子の神経細胞への電気生理学的・分子細胞生物学的影響の解明 抗GluRε2抗体がどのような作用機序でCNS病態に関与しているのかを明らかにするために、我々はラット海馬スライス標本を用いて興奮性シナプス後電流(EPSC)への影響を検討したが、NMDA成分のみと考えられるEPSCの振幅に有意な変化は見られなかった。
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