【背景】子宮内胎児発育不全(IUGR)の中枢神経障害の機序解明のため、胎仔〜新生仔期における中枢神経系の分子生物学的検討を行った。 【方法】IUGRモデルラットはトロンボキサンA2(STA2)を母獣に持続投与する方法にて作成した。中枢神経系におけるアポトーシスについて、TUNEL法を用いて組織学的に、またアポトーシス関連蛋白(BCL-2、BAX、β-actin)の発現を定量的に評価した。併せてコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)の発現については、Neurocan、Phosphacan、Neuroglycan Cについて免疫組織染色とWestern blotによる蛋白定量にて評価をした。 【結果】STA2を投与した母獣から出生した新生仔の出生体重は4.73±0.33gであり、対照群の5.95±0.35gに比して有為に少なかった。IUGR群では中枢神経系におけるTUNEL法にてアポトーシスが亢進している所見が認められたが、アポトーシス関連蛋白の発現に関しては、BAX、β-actinの発現に関しては、有意な差を認めるには至らなかった。BCL-2はすべての群で認められなかった。免疫染色によるCSPGの発現評価では、IUGR群において、日齢0および日齢10にけるNeurocan、Phosphacan、Neuroglycan Cの染色性が上昇していた。各CSPGの局在については、両群で差を認めなかった。Western blotによる蛋白定量評価では、IUGR群において、日齢0のNeurocanおよびPhosphacanの発現が亢進していた。 【考察・結論】本研究の結果からIUGRの中枢神経障害にはCSPGが関与している可能性が示唆された。これらの知見は、IUGRの中枢神経障害の機序解明に重要な示唆を与える。
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