研究課題
小児の神経疾患において、脳白質障害を病因とするものについて、原因遺伝子検索、頭部MRI画像の詳細な検討、magnetic resonance spectroscopy (MRS)解析等を実施した。10歳男児の広汎な急性散在性脳脊髄炎(ADEM)症例では、白質異常シグナル部位の深部白質のMRSを急性期と回復期において検討した結果、T2強調像ならびにFLAIR像における著明な異常信号にもかかわらず、エネルギー代謝状態を反映するMRS解析に明らかな差異を見出せなかった。臨床症状は軽微であり、機能的所見とMRS結果はよく一致していた。24歳女性の散在性白質形成障害例では、G-banding染色体検査にて18q一が判明しており、ここにlocusのあるMBP遺伝子の欠失の有無をMBP FISH法にて証明した。さらに、CGH法にて詳細な欠失部位を18q22.3〜terと解析できた。18番染色体異常症における脳白質障害の原因としてMBP遺伝子の欠失を強く示唆するものである。1歳男児のPelizaeus-Merzbacher病症例では、頭部MRIにて重度の白質形成遅延、聴性脳幹反応にてIII波以降の消失を認め臨床的診断がなされたが、そのPLP1遺伝子解析よりPLP遺伝子重複を確認した。これら脳白質の髄鞘化障害の疾患における髄鞘構成蛋白(MBPおよびPLP)の遺伝子異常の証明により、病態がより理解し易いものとなった。また、頭部MRI画像にて異常信号を呈する炎症性神経疾患においても、エネルギー代謝状態を反映するMRSは正常であり、より脳機能状態を反映することが判明した。
すべて 2006
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日本周産期・新生児医学会雑誌 42巻・3号
ページ: 596-603
Kobe Journal of Medical Sciences Vol.52,No.1
ページ: 1-8