1.トロンビン受容体PAR-1によるグリア細胞分化制御 トロンビンの主要な受容体であるPAR-1の活性化がグリア細胞の分化を制御していることを明らかにし、この作用を利用したアポトーシス現象への応用を検討した。ラット膠芽腫C6細胞にレチノイン酸を作用させることによって、髄鞘構成蛋白であるproteolipid protein(PLP)の発現を誘導することができる。この分化誘導をPAR-1のagonistであるTRAP-14は抑制し、PAR-1の作用阻害剤(E5510)は促進させる。また、PAR-1遺伝子の転写開始点を含むアンチセンスオリゴDNAによってPAR-1の発現を抑制すると、PLPの分化的誘導は促進された。また、PAR-1の活性化は分化抑制するのみならず、分化しないことで障害に強くなる現象が存在することを今までに明らかにしてきた。これらのことから、PAR-1の活性化制御によるグリア分化制御、さらにアポトーシス制御の臨床応用への可能性があると結論できた。 2.ヒト臨床例における白質障害とMRSによる細胞エネルギー状態評価 重症で広範囲の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)症例のMRI FLAIR高シグナル領域の細胞レベル・エネルギー状態を^3H-MRSにて評価した。亜急性期、回復期ともに異常なく、MRI異常シグナル部位におけるMRSが正常な場合、後遺症なく回復する可能性が示唆された。 3.ヒト白質形成障害例の遺伝子解析によるMBP遺伝子関与の証拠 小奇形症候群の例で、頭部MRIにて斑状の白質形成障害が認められた例で、Gバンド法では18番長腕の部分欠失が認められた。CGH法にて詳細に検討した結果、18q22.3-terの欠失が証明され、この部位に存在するMBP遺伝子の1コピー喪失が白質障害の原因であることを証明できた。
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