研究概要 |
サイトグロビンCytoglobin(Cyg)/STAPは細胞質と核に局在するグロビンタンパク質である。低酸素応答性ヘムタンパク質であるが,その生理機能は未知である。Cyg/STAP遺伝子を導入したアフリカツメカエルは無脳の奇形胚を生じヒト無脳症の病態と類似点が多い。本研究ではカエル無脳胚の原因遺伝子を解明しヒト無脳症の動物モデルとなるか否かを検証することを目的として研究を実施してきた。その結果、以下の研究成果を得た。1)正常胚とCyg/STAP奇形胚の遺伝子発現様式を比較検討することにより、無脳症の主因とされる神経管の閉鎖異常を起す遺伝子の発現様式を解析した。その結果、Cyg/STAP奇形胚ではWint11だけでなくWnt4,6,8の複数のWint遺伝子群の発現様式が大きく変化することが判った。また、Wintの受容体であるFrizzled遺伝子(Fz7,Fz8)の発現も抑制されていた。このことは、神経管の閉鎖に必要な遺伝子カスケードが選択的に抑制されていることを意味する重要な発見である。頭部形成に必要なCerberusやDickkopfの各遺伝子の発現も抑制されており、この系がヒト無脳症の動物モデルになり可能性を示唆する。2)抗一Cyg/STAP抗体を作製しアフリカツメカエルの初期胚や幼生について免疫組織化学的解析を実施した。その結果、Cyg/STAPタンパク質が脳や脊髄、体節、及び幼生の筋肉で強く発現していることが判った。また、その局在は組織特異的であり神経系では細胞核に、また非神経系では細胞質に強いCyg/STAPタンパク質の発現を認めた。このことはCyg/STAPの機能が各組織で異なることを示唆する。3)体外受精のヒト廃棄胚を利用する研究計画を学内研究倫理委員会へ提出し既に研究実施の承認を得た。また、ヒトについて約40種の候補遺伝子の解析系は確立した。しかし、現在までに十分な検体が確保できずヒト廃棄胚を用いた体系的な解析は実施できなかった。4)比較進化学的研究により、両生類ではミオグロビンの機能をCyg/STAPが代償している可能性を提唱した。
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