最近の新生児医療の進歩はめざましく、以前は救命し得なかった超低出生体重児においてもその多くが生存できる様になった。しかし神経学的予後については必ずしも改善が見られていない。最近ではこれら超低出生体重児、極低出生体重児に脳性麻痺、精神発達遅滞、聴力障害、視力障害、てんかん、ひいては学習障害、自閉症などの高度脳障害が後に認められる事が指摘されている。この病態、脳室周囲白質軟化症の原因は低出生体重児における大脳脳室周囲白質に対する梗塞性病変と考えられ、この病態の診断原因究明ひいては予防法の確立が今後の重要な課題と考えられる。 脳室周囲白質軟化症は従来大脳白質の嚢胞形成をもって診断されてきた。しかしながら明確な嚢胞の形成が認められない症例においても、神経学的予後が不良である例が報告されるようになってきた。従来より超音波診断装置、CT、MRIなどの画像診断法により本疾患の早期診断が試みられて来た。確かに明確な梗塞病変を形成した児においてはこれらの診断方法は有効であったが、嚢胞形成を伴わない、あるいは極めて微細な病変が散在する場合、その画像解像度、すなわち分解能の問題から本疾患を診断する事が極めて困難であった。特に梗塞巣が散在する大脳白質においては、その消費エネルギーの低下により脳内に流入してくる血液量も低下する可能性が考えられる。今回の頚部超音波法による流入血流の評価はこれらの病体を明らかにする目的で重要かつ有効である。 今回、我々が頚部超音波法を用いて検討した結果、通常の画像診断では捉える事ができなかった、微細な梗塞病変の存在を血流の低下という観点から大脳全体における流入血液量の低下を把握する事に成功した。従来の画像診断方法では異常が認められなかった部分においても血流量が低下している事を明らかにした。
|