研究課題
前年度の研究成果に引き続き、midkine(MK)を副腎全層に由来する培養細胞に添加し48時間後にNCAM/CD56陽性細胞数(DZ細胞数)をフローサイトメトリーにより調べると、MK非添加群に比べMK添加群で有意に細胞数が増加しており、MKのDZ細胞増殖促進作用が確認された。阻害剤投与実験によりMKシグナリングに関与するpathwayを検討すると、DZ細胞増殖促進作用におけるMAPKキナーゼ、PI-3キナーゼ、Srcキナーゼの関与が示唆された。さらにMKは胎児副腎の主要なregulatorであるACTHにより発現増強されることが明らかとなった。以上より、MKはヒト胎児副腎で重要な役割を果たしており、in vivoで認められるDZ主体の細胞増殖機構の一端を担っているものと考えられた。また我々はMKがin vitroでコルチゾール産生のkey enzymeであるHSD3B2の発現を抑制することも明らかにし、妊娠中期までの胎児副腎におけるコルチゾール産生抑制に関与している可能性を示した。MKによるHSD3B2発現抑制作用は、ヒト胎児副腎皮質細胞のモデル系であるNCI-295細胞系でも解明を進めており同様の結果が得られている。以上のように、当該研究課題の成果として、MKの胎児副腎での重要な役割が明らかとなった。胎児副腎は高等動物においては胎児視床下部副腎-胎盤系の重要な部分を担っているにも関わらず、その細胞増殖、分化(層形成)、発育、機能発現のすべてにおいて未解明な点が多い。得られた成果を本研究分野の今後の礎としていきたい。
すべて 2006
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