研究概要 |
この3年間に渡り,胎児房室ブロックを発症する可能性があるとされる母体抗SSA抗体陽性の胎児において房室伝導速度を前方視的に在胎18週より経時的に計測し,房室伝導障害の早期診断を試みた。特に,上大静脈と上行大動脈の同時血流波形により継続して行い,正常値を更新してきた。一方,この房室伝導速度について,臨床的に計測が困難な場合が有ることを前年に示していたが,他の肺静脈肺動脈の同時血流波形,および無名静脈,大動脈弓での計測法による補助的診断の有用性について.報告してきた。本年度は,さらに左室流入波形と流出波形の同時記録,あるいは左室流入波形のA波の継続時間を計測し,この有用性の検討を行った。 昨年度の日本での胎児心疾患診断のガイドラインにおける胎児不整脈の公表をもとに,各種論文,著書において,本研究の胎児房室ブロックの早期診断を含めた,胎児不整脈の診断と管理方法に付いて発表を行った。 本年度はさらに4例に対して抗SSA抗体陽性母体の管理を行った。本年度も研究分担者の丸岡浩と堀大蔵に内科的,産科的な妊娠管理を依頼し,在胎18週から経時的に房室伝導速度を計測した。しかし,本年度も新規の房室ブロック発症は無く,実際に本方法によって早期診断例,胎内治療の早期介入についての証明を進める事ができなかった。一方,本年度前年度の症例を含み,過去の胎内治療症例について経時的に心機能や発達検査を施行したが,心筋症の発症や,発達や発育障害などの問題は認められなかった。
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